研究概要 |
昨年度に引き続き,単一微結晶の作製をまず試みた.その結果,従来の再沈法によって作製した微結晶水分散液に,直ちにマイクロ波(2.45GHz)を照射することによって,微結晶作製時間の短縮化および単分散化に成功した.特に,有機EL素子用化合物の微結晶化によって,その発光強度が結晶サイズに依存することが明らかとなった.高分子電解質薄膜を用いた微結晶累積薄膜化については,金属超微粒子と微結晶とのヘテロ系交互累積技術がほぼ確立され,その光学特性についての解析に入った.また,PDA微結晶分散高分子薄膜を挿入したFabry-Perot光共振器を用いた光スイッチング動作の確認がなされた.一方,イオン・トラップに捕獲した数μmから数十μmの液滴をいろいろな角度から研究した.液滴のサイズをFraunhofer回折と移動速度の解析から求め、両者がほぼ一致することを確かめた.また,蛍光性分子を含む液滴について蛍光スペクトルの測定,予備的ながらラマンスペクトルの測定が可能になった.さらに,これとは別にp-Nitroanline,Dimethylamino-nitrostilbene,メチレンブルーなどの薄膜中で微結晶が配向することを示すいくつかの実験的証拠を得た。さらに,非常に興味深い微結晶の光物理・化学過程を明らかにした.ペリレン微結晶の励起1重項および励起3重項状態のダイナミックスと吸着分子間とのエネルギー移動および電子移動過程の解明を時間分解蛍光測定で行った.その結果,短波長側に寿命の短いfree-excitonと長波長側に寿命の長いse1f-trapped excitonの蛍光が観測された.このexcitonの消滅にともなって励起3重項状態の過渡吸収が出現し,一部は微結晶内部の3重項状態同士の衝突によって消滅するが,一部は寿命の長い成分として生き残る.溶液に電子供与性のアミンを添加すると,se1f-trapped excitonの蛍光よりさらに長波長側の新たな蛍光が観測され,ペリレン微結晶表面でのexciplexの生成が示唆された.寿命の長い励起3重項状態も溶液中の基質との反応が示唆された.ユニマーミセル内部のC_<60>の励起1重項および励起3重項状態のダイナミックスと3重項クエンチャーとの反応を解析した.CdS微粒子とC_<60>との光誘起電子移動過程の近赤外領域の過渡吸収により研究した。その結果,CdS微粒子からC_<60>の励起3重項状態への電子移動が観測され,C_<60>の陰イオンが電子伝達系として有効かどうか,確認中である.チオフェンオリゴマー単一微結晶の蛍光発光挙動の測定.顕微鏡下でチオフェンオリゴマー単一微結晶の一部をレザー照射したときの発光の挙動を観測している.これらの研究成果を踏まえて,最終年度では微結晶・微粒子の内部構造,電子構造,光学特性を結晶サイズの関数として明らかにして行く.
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