研究概要 |
1.我々は、分子キラリティー認識の新規円二色性法の開発と応用を目的に、単一官能基キラル分子の絶対配置を励起子カイラリティー法で決定する新規戦略を立て、その方法を開発した。(1)CD補助基として2個の(1-ナフチル)基をもつアキラル系を設計。(2)CD補助基を単一官能基のキラル分子にエステルあるいはエーテル結合で結合。(3)キラリティーが伝播し、2個のナフタレン発色団はキラル立体配座を取る。(4)ねじれに対して励起子分裂型コットン効果を観測。(5)分子力場計算等で配座解析し、発色団間のねじれを理論的に決定。(6)実測CDと比較し、絶対配置を非経験的に決定。この方法を適用して種々のキラルモノアルコール類の絶対配置を決定できた。 2.物質科学研究の究極の目的の一つは「分子機械」の開発である。そこでは1個の分子が外部エネルギーを得て、機械として作動する。我々は、分子機械の一つである「光動力キラル分子モーター」の世界で初めての開発に成功した。この分子モーターは光動力機構をもち、また「ツメ歯車効果」により回転方向の制御に成功している。 3.我々はチアカリックスアレーン(TCA)の簡易合成法を見出して以来、架橋硫黄の特性を利用し、従来の系では実現困難な立体化学制御を達成した。(1)架橋硫黄の金属イオン配位で、TCAの立体配座をconeに固定できた。硫黄酸化体でも立体制御が出来た。(2)これらの立体配座制御により、架橋SOの立体配置による立体異性体の全てを合成した。(3)隣接する架橋硫黄2個を酸化し、SO中心の不斉を構築した。(4)1,3-alternate型TCAの架橋硫黄を1個酸化し、骨格の不斉化を実現した。(5)TCA架橋硫黄酸化体にキレーション制御型芳香族求核置換反応を適用できた。(6)TCAに不斉アミドを導入しGC用不斉固定相へ応用できた。
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