研究概要 |
現代の有機合成化学の最重要課題は立体化学の制御を含めた反応の選択性の追及にある。高選択的な立体化学制御のためには、触媒反応の設計とその動的な制御が不可欠である。本研究では、(1)新しいコンセプトに基づく触媒系の創製、(2)触媒と基質との相互作用の動的挙動の解明、および(3)外部分子による制御を研究テーマとして新しい動的立体化学制御法を確立する。さらに、異なる金属錯体触媒の相剰作用は、立体選択性と共に反応性の向上をももたらす可能性があり、これらの異種金属錯体触媒系では安定な結合の活性化法への展開も可能と考えられる。本申請研究では、新しいコンセプトに基づく触媒系の創製、すなわち添加分子、さらには、異種金属錯体触媒とのコンプレックス形成による相剰効果に基づく、新しい動的立体化学制御法の確立を目的とする。触媒反応系に適当な添加剤を加えると反応が停止することはよく知られているが、逆に添加剤により反応が促進されることも考えられる。これらの異種金属錯体触媒系の相剰作用に基づけば、これまで一種類の金属錯体触媒では困難であった反応の開拓へも発展させられよう。例えば、これまで未開拓のσ結合、特にC-H結合の活性化とその立体化学制御に取り組む。そのために、反応の遷移状態における分子認識と立体化学制御を可能にするキラルな反応促進剤(触媒活性化剤)の探索と触媒配位子との組み合わせを検討した。キラルな触媒活性化剤と配位子がホモキラルなコンプレックスを優先的に形成するのか、ヘテロキラルなコンプレックスを形成するのか、さらには可逆的な錯体形成をするのか非可逆的な錯体形成をするのがを検討した。最後に、ホモ対ヘテロキラルな2種の金属錯体触媒の示す相対反応速度が最も重要なことを明らかにした。従って、コンプレックス形成の平衡定数(K)、基質との相互作用の速度kR,kSと逆反応速度k-R,k-S、さらにはそれぞれの基質/錯体触媒による基質の反応速度kR,R,kS,R(異種錯体触媒間のキラリティーの組合せを示す)に基づいて、動的立体化学制御の連続的変化を数値解析した。
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