研究概要 |
1.光学活性ビスホスフィン配位子TRAPの合成とその金属錯体の構造 リン原子上の置換基として様々なアルキル基、アリール基を持つ光学活性ビスホスフィンTRAPを、大量入手可能な光学活性N,N-ジメチル-1-フェロセニルエチルアミンから4工程で合成した。塩化白金錯体を形成させた場合、TRAPはリン原子上の置換基により2つの異なる構造の錯体を与え、置換基が大きな場合にはTRAPがトランスでキレート配位した錯体を、不さい場合にはシスでキレート配位した錯体を与えることを明らかにした。 2.1,4,5,6-テトラヒドロピラジン-2-カルボン酸アミドの触媒的不斉水素化 TRAPを1,4,5,6-テトラヒドロピラジン-2-カルボン酸アミドの触媒的不斉水素化に応用したところ、i-BuTRAPを不斉配位子として用いた場合に、医薬品の合成中間体としてピペラジン-2-カルボン酸アミドが最高97%eeで得られた。また興味深いことに、同じ絶対配置のMeTRAPを不斉配位子として用いた場合には、i-BuTRAPで得られる生成物の鏡像異性体が85%eeで得られた。 3.複素芳香族化合物インドールの触媒的不斉水素化 リン原子上にフェニル基を持つPhTRAPと[Rh(nbd)_2]SbF_6から系中で調製されるロジウム錯体を触媒として、塩基存在下、2位に置換基を持つインドールの触媒的不斉水素化を試みたところ、最高95%eeの鏡像異性体過剰率で光学活性インドリンが得られた。本反応は五員環複素芳香族化合物の触媒的不斉還元の初めての例である。
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