アセチレン、オレフィン、一酸化炭素の3成分が[2+2+1]型環化付加し、シクロペンテノン骨格を形成する反応はPauson-Khand反応と言われている。ここで、オレフィンの炭素原子の一つを酸素原子や窒素原子で置き換えて同様の変換反応が進行すれば、生成物としてラクトン骨格やラクタム骨格が形成されることになる。本研究では、そのような反応の開発を目的として検討を行なった。その結果、分子内にアセチレン、アルデヒドを持つイン-アルデヒド類を基質として用いた場合、ラクトンへの変換反応が触媒的に進行することを見いだした。 アセチレン末端にシリル基を有するイン-アルデヒドを、触媒量のルテニウムカルボニル存在下、一酸化炭素10気圧、トルエン中160℃、20時間反応させたところ、原料は全て消費され、単離収率82%で、ビシクロラクトンが得られた。他のルテニウム錯体Ru(CO)_2(PPh_3)_3、[RuCl_2(CO)_3]_2、Ru(acac)_3、Cp^*RuCl(cod)やルテニウム以外の金属錯体CO_2(CO)_8、[RhCl(CO)_2]_2、Rh_4(CO)_<12>、RhCl(PPh_3)_3、Ir_4(CO)_<12>はいずれも、同条件下、本反応には触媒活性を示さなかった。本反応には、炭素鎖がもう一つ長いイン-アルデヒドや鎖中にヘテロ原子を含むイン-アルデヒドなど広い範囲の基質に適用できることが分かった。また、イン-イミン類も反応し、ラクタムを与えることも見いだしている。 本反応は、アセチレン、アルデヒド(イミン)と一酸化炭素が、触媒的に[2+2+1]環化付加した初めての例である。
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