本研究は、一酸化炭素を一炭素ユニットとする新しい触媒的環化付加反応を開発することを目的とした。以下に具体的な成果を述べる。 カルボニル化合物、オレフィン(あるいはアセチレン)、一酸化炭素との分子間[2+2+1]型環化付加反応を見出した。アセトフェノンのような単純なケトンやアルデヒドでは、反応は進行しなかったが、ケトンとしてα-ケトエステルを用いたところ反応が良好に進行することを見いだした。本反応は、分子間のカルボニル化合物、オレフィン、一酸化炭素による[2+2+1]環化付加の初めての例である。この反応には、ホスフィンの存在が必須で、ホスフィンを添加しないとほとんど進行しなかった。そこで、ホスフィンの構造と収率の関係を詳しく調べると、電子吸引基の付いたホスフィンほど収率が向上することがわかった。すなわち、ホスフィンのpKa値が低ければ低いほど、収率が高くなる。結局、P(4-CF_3C_6H_4)_3を加えた時、ほぼ定量的に対応するラクトンを与えることがわかった。この反応は、α-ジケトンでも反応し、対応するラクトンを与えた。このことから、ジカルボニルによるルテニウムへの配位が重要であると考えられる。ホスフィンの役割については、今のところ不明であるが、電子吸引性ホスフィンが基質のルテニウムへの配位を容易にしているものと考えている。 エチレン以外のオレフィンも用いることができるが、時間がかかる上に位置選択性の向上が今後の課題である。
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