研究概要 |
触媒的カルボニル化環化付加反応は、比較的合成が容易な鎖状の化合物から複雑な骨格を持つ環状カルボニル化合物が一段階で構築できることから有機合成化学的にも有用であり、興味がもたれている。本研究では、新しい型式のカルボニル化環化付加反応の開発を目指し、アルデヒドやケトン(あるいはイミン)を基質として検討をおこなった。成果を下に示す。 ルテニウムカルボニルがイン-アルデヒド類の分子内[2+2+1]型反応に高い触媒活性があることを見いだした。反応は効率良く進行し、双環性不飽和ラクトンが生成した。この反応は、アセチレン、アルデヒドと一酸化炭素が、触媒的に[2+2+1]環化付加した初めての例である。イン-イミンの不飽和ラクタム合成へも応用できる。 さらに、α,β-不飽和イミン類と一酸化炭素との触媒的[4+1]環化付加反応が、ルテニウムカルボニルを触媒として進行することを見いだした。本反応は、構造上単純な1,3-共役系を用いて進行した初めての例である。シクロプロピルイミンを基質に用いると[5+1]型環化付加が進行し、6員環ラクタムが得られる。 今まで例のなかったケトン(アルデヒド)、オレフィンと一酸化炭素との分子間[2+2+1]環化付加反応がケトンとしてα-ケトエステルを用いたところ反応が良好に進行することを見いだした。この反応は、ホスフィンの存在が必須であり、電子吸引基の付いたホスフィンほど収率が向上する。Α-ジケトンでも対応するラクトンを与えた。このことから、ジカルボニルによるルテニウムへの配位が重要であると考えられる。そこで、一方のカルボニル基を窒素原子に置き換えると、ホスフィンの添加がなくても高収率で環化カルボニル化が進行することがわかった。本反応は、分子間のカルボニル化合物、オレフィン、一酸化炭素による[2+2 +1]環化付加の初めての例である。
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