研究概要 |
カルボニル化合物の還元的カップリング反応は、隣接した二官能性炭素-炭素結合を直接構築する手法として重要であり、一般に前周期低原子価金属錯体を用られるが、等量もしくは過剰量を必要とする。我々は、触媒量の前周期遷移金属/量論量の共還元剤/量論量のクロロシランからなる三成分複合系を開発し、触媒的ピナコールカップリング反応を可能にしてきた。さらに、脂肪族二級アルデヒドの高立体選択的な炭素-炭素結合形成を明らかにしている。 今回、ベンズアルデヒドのカップリング反応において、詳細にその反応条件を検討した。ベンズアルデヒドのカップリングにおいて、基質(3.3mmol)、バナジウム触媒(5mol%)、種々の還元剤(6.6mmol)を用いてMe_3SiCl(6.6mmol)存在下、アルゴン雰囲気中24時間で反応を検討した。dl選択的にジオールが得られが、還元剤としてAlを用いた場合に立体選択性の大幅な向上が見られた。さらに、酸化剤として用いられるVOCl_3を触媒として用いた場合に、最高80%deまで向上した。DME溶媒では、立体選択性にさらに向上した。種々のベンズアルデヒドに対しても高い選択性が見られた。このように、cat.VOCl_3/Me_3SiCl/Alはピナコールカップリング反応に対して有用な触媒系であることが明らかとなった。 次にベンズアルジミン類のカップリング反応について検討したところ、meso選択的に対応する1,2-ジアミンが得らた。この系ではイミダゾールを共存させることが高収率化に必要であった。これまで報告されている立体選択性はほとんどdl体を示し、meso体を高選択的に得たという報告例はほとんどなく、本触媒系の特徴である。 希土類元素の一電子レドックスに基づいた有用な活性種生成法でも詳細な反応条件を検討し、レドックス過程の精密制御により、新触媒系の開発を行った。
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