炭素ラジカルと陰イオンの連続発生とその利用における立体化学制御

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10208212
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 高井 和彦 岡山大学, 工学部, 教授 (00144329)
• 研究分担者: 宇根山 健治 岡山大学, 工学部, 教授 (00033150)
• キーワード: クロム(II) / 3分子連結反応 / 立体化学制御 / ラジカル / N-アクリロイルオキサゾリドン / トリフルオロメチル基 / フッ素 / シクロプロパン

研究概要

低原子価の金属から有機化合物への電子移動を制御することにより、炭素ラジカル種や陰イオン種を連続して発生させ、分子間の多段階反応を一挙に行なうという新しい手法を検討した。低原子価の金属塩としては、クロム(II)を取りあげた。二級あるいは三級ヨウ化アルキルにクロム(II)を作用させると、その1電子還元によりラジカルが生じる。この系中にα,β-不飽和エステルとアルデヒドを共存させておくと、それら3分子をone-potで連結できるが、その際のジアステレオ選択性は高くなかった。しかし、ラジカルの受け手として、α,β-不飽和エステルにかえN-アクリロイルオキサゾリドンを用いると、syn体の3分子連結生成物が選択的に生成することを見いだした。また、不斉な3-ベンジルオキサゾリドンのアクリル酸誘導体を用いると、TMEDAの添加により、高い選択性でEvans-type―syn体のアルドール3分子付加体が得られた。
トリフルオロメチル基近傍での動的立体制御による分子内求核置換反応の開発に成功し、α-シアノカルバニオンをトリフルオロメチル基のα位の水酸基と立体特異的に分子内S_N2反応で置換し、三置換シクロプロパンを合成した。また、新規な光学活性トリフルオロメチル置換アミノアルコール類を合成し、これを不斉配位子としてベンズアルデヒドの不斉エチル化(90〜95%e.e.)を行なった。さらに、含フッ素α-イミノエステルのパラジウム触媒によるトリフルオロエタノール中での不斉水素化(88%e.e.)を行なった。これは、イミノエステルの不斉水添化の初めての成功例である。
以上の研究成果は、学術論文および口頭発表として報告した。

研究成果

• [文献書誌] Kazuhiko Takai, Tetsuya Ichiguchi and Shintaro Hikasa: "A Practical Transformation of Aldehydes into (E)-Iodo-alkenes with Geminal Dichromium Reagents"Synlett. 8号. 1268-1270 (1999)
• [文献書誌] Kazuhiko Takai, Shintaro Hikasa, Tetsuya Ichiguchi and Naoki Sumino: "One-pot Transformation of RCHO to (E)-RCH=CHSiMe_3 Using CHI_3, Mn, Me, SiCl and a Catalytic Amount of CrCl_2"Synlett. 11号. 1769-1771 (1999)
• [文献書誌] T.Katagiri, M.Irie, K.Uneyama: "Intramolecular S_N2 Reaction α-to a Trifluoromethyl Group : Proparation of 1-Cyano-2-trifluoromethylcyclopropane"Tetrahedron : Asymmetry. 10巻. 2583-2589 (1999)
• [文献書誌] T.Katagiri, M.Takahashi, Y.Fujiwara, H.Ihara, K.Uneyama: "General Synthesis of OpHcally Active α-trifluoromethylated Amines via Ring-Opening Reactions of N-Benzyl-2-trifluoromethazir"J. Org. Chem.. 64巻20号. 7323-7329 (1999)
• [文献書誌] T.Katagiri, K.Uneyama: "A Chemistry of 2,3-Epoxy-1,1,1-trifluoropropane"J. Fluorine Chem.. (印刷中). (2000)