平成10-13年度にわたって展開された特定領域研究「超対称性と素粒子の統一理論」の全体の研究成果をとりまとめた。また、特定領域研究の主要なテーマであった超弦理論の非摂動的力学の研究、特にG2ホロノミーを持つ多様体上にコンパクト化されたM理論の力学についての成果を取りまとめるために国内外の研究者と議論を行った。 G2ホロノミーをもつ7次元多様体はその上にキリング・スピノルが唯一つ存在するため4次元でN=1超対称性をもつゲージ理論・重力理論を与えることが知られている。このため現象論から要請される現実的な統一模型を導く可能性を持つものとして広く注目されている。今年度、江口はN=1コセット模型とリュービル場を用いた広いクラスの模型がG2ホロノミー多様体を記述することを示し共形場の手法を用いてその力学を調べた。 特定領域研究「超対称性と素粒子の統一理論」全体の主要な研究成果としては、特異性をもつカラビ・ヤウ空間上の弦理論、位相的弦理論とビラソロ予想(江口)、オービフォルド模型を用いた統一ゲージ模型の構成(柳田)、超対称行列模型の力学(風間)、超対称ゲージ理論のドメイン・ウォール解(坂井)、高次元ゲージ理論とヒッグス場の起源(稲見)、例外型ゲージ理論のサイバーグ・ウイッテン解(梁)などがある。特に、位相的弦理論の振幅がビラソロ代数を満たす無限個の微分作用素によって消されることを主張するビラソロ予想はこうした方面の研究に大きなインパクトを与えた。また、オービフォルドなどの弦理論の手法を用いて統一ゲージ模型を構成する研究は引き続き活発に行われている。 これらの研究をはじめとした全研究分担者の研究成果をとりまとめて報告書を出版した。
|