研究概要 |
江口は(1)標的空間M上の位相的弦理論の分配関数を調べこれを消す無限個の微分作用素が中心電荷c=χ(M)を持つビラソロ代数の交換関係を持ち,位相的漸化式と併用する事によってM上の正則曲線の数を正しく再現する事を示した。また(2)良く知られた4次元・5次元のブラックホールはホライゾン付近に空間AdS_3を含み,従ってAdS_3/CFT_2対応を用いてブラックホールのエントロピーを計算ができ、さらにnon-extremeな領域のブラックホールについても信頼される結果が得られる事を示した。 松尾は(1)数学で研究が進んでいるHilbert schemeのアイディアを用いて、ソリトンの力学のトポロジカルな部分については量子化可能であることを発見した。さらにこの理論の分配関数の計算において低次元可解系に現れる、Calogero-Sutherland模型の固有関数が自然に現れることを議論した。(2)D-braneに境界を持つ開いた弦の行列模型による記述を求めた。D-braneの次元が1,5,9の場合には問題ないが、3,7の場合には超対称性に問題が起こることを指摘した。 菅原は(1)(p,q)5-braneにおけるfractional stringをMatrix stringとみなすことによってその物理的ふるまいが自然に理解できることを示した。(2)AdS_3/CFT_2-dualityに関してGiveon-Kutasov-Seibergのspace-timeSCFTの正しい真空を決定し、chiral primary stateのスペクトラムを詳細に解析し、元のGKSの研究におけるスペクトラムの問題点を解決した。(3)AdS_3/CFT_2-dualityにおいて、超重力理論のdual SCFT_2をnon-linear σ modelのquiver projectionとして定義し、chiral primaryの解析を行い、SUGRAとconsistentな結果を得た。 川野は(1)マトリックス理論でのトーションのあるトーラスへのコンパクト化の方法を与え、この理論が非可換幾何に基づくトーラス上のヤン-ミルズ理論に対応していることを示した。(2)弦理論でのN枚のD3に端を持つ弦からなるネットワーク状の配位に対応した状態を、一般のNにおいて、そのブレインの低エネルギー理論であるヤン-ミルズ理論における新しいソリトン解として得た。
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