非摂動論的な超弦理論の研究の発展は、弦理論のもつ構造の豊かさを明らかにし、超弦理論の示唆する素粒子の統一模型の研究に対しても大きな影響を与えている。こうした状況の中で、超弦理論の最近の発展を動機とし、こうした新たなパラダイムに基づく統一理論の現象論的研究を進めるのが、本研究の目的である。 本年度の研究のなかで特筆すべきものとして、(1)I型などの超弦理論においては、弦の典型的なスケールが1TeVぐらいになりうるが、そうした場合の現象論的研究。とくに、標準模型のゲージボソンのカルザ・クラインモードのLHC実験における可能な信号としてどのようなものがあるか、どのぐらいの質量スケールまで実験的に到達できるか。また「大きな余次元」のシナリオにおいて中間スケール(例、アクシオンのスケール)をいかにして作るか、その現象論的宇宙論的制約等について議論した。(2)統一理論におけるフェルミオン質量の説明。フレーバー対称性と現実的なフェルミオン質量行列に関する研究。(3)R-パリティの破れた超対称理論におけるニュートリノ質量の生成の機構に関する研究。最近のニュートリノ振動を示唆する諸々の実験結果との比較検討(4)インフラトンの崩壊時におけるレプトン数の生成の機構の提唱。(5)超高エネルギー宇宙線の実験から示唆される非常に重い暗黒物質の研究、などがあげられる。 これらの成果は論文、あるいはプレプリントとして公表している。
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