超弦理論は、高次元の統一理論を記述するものとして期待されている。近年、超対称統一模型の諸問題をこうした高次元理論のアプローチから解決しようとする試みが様々なされ、注目されている。柳田とその共同研究者は、大統一理論の困難であるヒッグス3重項と2重項の分離の問題を自然に説明できるなどの好ましい性質を持っているセミシンプル統一模型が、高次元のタイプIIB超重力理論をオービフォールドにコンパクト化した理論に埋め込まれ、模型の持つ諸性質が、この枠組みで自然に理解できることを示した。また、オービフォールドの性質を用いて大統一群を破る統一模型について、6次元の理論から出発した場合に超対称統一理論の持つ好ましい性質が保たれることを議論した。さらに、クォークやレプトンの世代数や性質について、その起源を高次元の理論に求めることが出来るという推測をあたえた。その他、ニュートリノ振動を説明する模型の研究、レプトン数の破れと宇宙のバリオン数生成に関する研究、宇宙の暗黒エネルギーを説明する模型の構築などについて研究をすすめた。山口とその共同研究者は、余剰次元を用いて、大統一模型の諸問題、すなわちヒッグス3重項と2重項の分離の問題や、陽子崩壊の抑制などを説明する新しい機構を提唱した。また、TeVスケールの余剰次元模型について、現在の実験からの制限や、将来のLHC実験などでどのような信号が選られうるかについて、研究した。その他に、超対称模型における超対称性の破れの伝搬の機構とその現象論的帰結などについて研究をした。これらの成果は、論文あるいはプレプリントとして公表している。
|