超重力理論の枠組みでインフレーション宇宙について研究を行った。まず、ニューインフレーションの初期値問題がプレインフレーションと呼ばれるインフレーションがニューインフレーションの前に起これば超重力理論の効果で初期値が決まり、問題が解決することを示した。このダブル・インフレーションモデルは原始ブラックホールの生成や密度揺らぎスペクトルの折れ曲がりなどを予言し、観測的に興味深い。さらに、従来困難だと思われていた我々は超重力理論でのカオティックインフレーションモデルの構築をすることに成功した。さらに、超対称性理論でのバリオン数生成、特に、アフレック・ダイン機構とそれに伴うQボール生成について調べ、Qボールの存在によって理論のパラメータが厳しく制限されることを示した。 11次元の超重力理論において、重力の有効作用の量子補正が曲率の4次から始まることを利用すると、共型変換によって得られるスカラー場によってトポロジカルインフレーションが起こることを示した。揺らぎの振幅が観測に一致するためには大きな余剰次元が必要であることが示され、現在精力的に研究されている大きな余剰次元を持った宇宙論の嚆矢となった。超重力理論においてケーラーポテンシァルの高次項によらずとも適切な再加熱が実現する現実的なダブルインフレーションモデルを構築した。現在観測されている宇宙項はわれわれが縮退した真空を持つ理論の摂動的状態にあると考えれば、自然に説明できることを示した。近い将来宇宙背景輻射の全天マップが得られた際に、これを初期宇宙の揺らぎのスペクトルに還元する手法を開発した。これによって宇宙初期のインフレーション時代の素粒子現象に関する知見を背景輻射の観測データから得ることが可能になる。
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