研究概要 |
本年度は,超対称性を持つゲージ理論の非摂動効果に関わる諸問題を研究することに重点を置いた。超対称ゲージ理論では,高い対称性のおかげで,さまざまの厳密な結果が得られている。こうした厳密な結果が得られる原因は,しばしば超対称性が部分的に破れている状態,いわゆるBPS状態が系に存在することが鍵となっている。BPS状態のうちでも,近年発展が著しいものとして,いわゆるブレーン,またはドメーンウォールと呼ばれる,時空の対称性を一部破るようなソリトン解が多くの研究者の注目を集めている。坂井らは,こうしたBPS解としてのドメーンウォール解が複数集まると,ジャンクションを生じることを示し,解析的な解を世界で始めて構成してみせた。この厳密解によって,いままで誤解されていた中心電荷の符号や,物理的役割について,新たな知見が得られた。 AdS/CFT対応によると,d+1次元反ド・ジッター(AdS)時空上の超重力理論とそのd次元境界上の共形場理論(CFT)の間に双対関係がある。超重力理論の場の境界上の値は,d次元共形超重力理論の超多重項をつくることが予想されていた。我々は,このAdS超重力と共形超重力の関係を,3次元AdS時空の場合に具体的に調べ,AdS時空内部の局所変換から誘導される境界上の場の変換が,2次元共形超重力の変換と一致することを示した。特に,ワイル変換と超ワイル変換は,3次元の一般座標変換と超変換から生成されることがわかった。同様に,7次元のN=4AdS超重力理論と6次元のN=(2,0)共形超重力理論の局所対称性の関係も示した。また,3次元反ド・ジッター時空の場合に,この結果を使って共形超重力背景場中の2次元共形場理論のアノマリーを求め,通常の場の理論的方法から求めたものを再現することを確かめた。
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