研究概要 |
本年度は,ブレーンと呼ばれるソリトン上に我々の4次元時空があるという,いわゆる余剰次元を持つ模型を用いて統一理論を考える立場で,さまざまな模型構築に役立つ研究を行った。特に,超対称性を持つ場合について,場の理論的観点から研究を行った。超対称性が部分的に破れている状態,いわゆるBPS状態は,超対称理論での非摂動効果を考察するに際して重要な役割を果たしている。すでに,坂井らは,こうしたBPS解としてのドメーンウォール解が複数集まると,ジャンクションを生じることを示し,解析的な解を世界で始めて構成してみせた。この厳密解の性質を詳しく調べることによって,いままで誤解されていた中心電荷の符号や,その物理的役割について,新たな知見が得られた。また,ジャンクションの厳密解上でのモードを調べ,南部・ゴールドストンモードが予想に反してジャンクション上に局在していないことを発見した。さらに,異なるドメーンウォールが複数あると,その共存によって超対称性が破れることがあることを示し,この機構によって生じる超対称性の破れを解析した。 谷井らは昨年度に引き続き、AdS/CFT対応における局所対称性について研究を行った。10次元の弦理論を低次元の反ド・ジッター時空にコンパクト化すると、超重力多重項の他にいろいろな物質場の超多重項が現れる。このような物質場の反ド・ジッター時空境界付近での振る舞いを調べた。具体的には、3次元N=(2,0)AdS超重力理論を考え、物質場としてケーラー多様体をターゲット空間とする超対称非線形シグマ模型を使った。ターゲット空間の大きさによって、物質場に対して2種類の境界条件を課すことができ、それぞれ境界上の2次元共形超多重項が得られることを示した。ワイル変換の重みは、ターゲット空間の半径と重力定数の比によって決まる。これらの研究結果は、現在投稿中の論文で発表予定である。
|