研究概要 |
多次元周期構造であるフォトニック結晶は強力な光閉じ込めをもつ光配線,自然放出が制御された無しきい値レーザを実現すると期待されている.昨年度の研究では,誘導結合プラズマエッチングを用いた精密な半導体加工により,サブミクロン周期の2次元フォトニック結晶を高アスペクト比で形成する技術を確立した.本年度はこの技術をGaInAsP/Si0_2薄膜スラブ構造に適用し,フォトニック結晶導波路を作製した.そしてこの種の導波路としては初めて,光通信波長帯における光伝搬の観測に成功した.さらにこの導波路で最も興味深い特徴といえる急激曲がり導波路の低損失伝搬も,上記の導波路に導入した60度曲がりにおいて実証することに成功した.光伝搬の帯域は,フォトニックバンド計算,ならびに時間領域有限差分法によるシミュレーション結果とおよそ一致した.次により低損失な導波路を可能にするため,LSI等に利用される高品質なSOI基板に同様の導波路を作製した.そしてこちらも伝搬を観測することに成功した.現在,損失等の定量評価を進めている.また昨年度の研究では,GaInAsP半導体を加工してフォトニック結晶を作製すると,露出された表面が大きな非発光再結合を生んでしまうことが位相差検出法を用いた発光寿命測定より明らかになった.この効果を減らすため,本年度,加工された表面に対する様々な処理を試した.その結果,メタンプラズマを照射することによって非発光成分が約半分に減少することを発見した.この処理はフォトニック結晶レーザを実現する上できわめて有用と考えられ,次年度以降,レーザの作製プロセスに導入する予定である.
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