研究概要 |
本年度は,フォトニック結晶中の光伝搬について総合的な研究を行った.最初にフォトニック結晶スラブに形成した線欠陥導波路についてFDTD法を用いた3次元フォトニックバンド計算を行い,円孔とスラブ膜厚依存性を調査するとともに最適設計を行った.そして昨年度末に実験により得られた光伝搬帯との対応関係を確認した.また観測されている伝搬損失が10dB/mmオーダーと大きいことに関して散乱損失の理論解析を行い,構造の荒さが20nm以上存在するときにはこのような損失が妥当なこと,荒さを5nm以下まで小さくしないと1dB/mm以下が得られないこと,ただし通常の高屈折率細線導波路よりも荒さに対する許容範囲が大きくなることを示した.一方,線欠陥を持たない均一なフォトニック結晶に関しては,スーパープリズムと非線形増大に関する計算を行った.スーパープリズムについては分散面における二つに微分因子が波長分解能や解像点数に密接に関連することを見いだした.結果として,従来言われていた波長に対して光が急激に偏向する特徴は利用できないことが明らかになり,逆に光がコリメートされる特徴を利用することで高分解能が得られることを見いだした.一方,非線形効果に関しては,円孔配列2次元フォトニック結晶における第二フォトニックバンドのΓ点付近で特に増大が起こることを見いだした.これは光パワーが非線形媒質に局在して光閉じこめ係数が向上するために起こることがわかった.そして光応答が急激に飽和する光リミッタ動作が可能になることを示した.さらにこの構造を実現するにはスラブ構造が必要となるが,上記のΓ点は光が漏れ出す条件であるにも関わらず放射損失が非常に小さく,昨年度提案した突起型境界を導入すれば入出射の反射も十分に抑えられるため,93%と十分に高い透過率が得られることもわかった.
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