金属素材中に含まれる大型非金属介在物は、薄板の傷、線材の断線、強加工時の割れなどの主原因となるため、介在物を含まない清浄度の高い金属素材製造法の開発が希求されている。本研究では、(1)溶融金属中の介在物を電磁力によって分離・除去する方法、(2)攪拌によって微細介在物を凝集・肥大化させて電磁分離する方法を提案し、その除去特性を検討することを目的とした。 まず、交流磁場と交流電流の同時印加による電磁分離法を提案し、水銀モデル実験でその分離特性を確認した。その結果に基づいて、鉄鋼中介在物の電磁分離装置を設計し、製造プロセス規模で30μm以上の介在物を完全分離できることを示した。また、高周波磁場を利用した介在物の電磁分離特性を溶鋼のSi脱酸実験およびAl-SiC粒子系のモデル実験によって調査した。その結果、溶鋼のSi脱酸速度が、乱流凝集で肥大化したSiO_2粒子の電磁分離過程で支配されていることを初めて示した。さらに溶融Al中の平均粒径23μmのSiC粒子の電磁分離が高速で進行し、約200gの溶湯から数秒でSiCを除去できることを示した。一方、溶湯に機械攪拌を付加すると電磁分離が抑制されるが、分離抑制の臨界攪拌条件を明らかにすることによって、鉄鋼の電磁鋳造国家プロジェクトにおける介在物集積問題の解決に大きく貢献した。 これまでの介在物の電磁分離理論は1個の球について展開されているが、2個の球の場合については全く知見が得られていなかった。そこで本研究で2個の球が電流、磁場および電磁力のそれぞれの向きに並んだ場合の電磁力と流速の分布を初めて理論的に明らかにし、介在物群やクラスターなどの複雑系の研究の端緒を開いた。 一方、溶融金属の電磁ポンプとして、回転ねじれ磁界による駆動方式を提案し、固体金属棒および液体Gaを用いた性能試験によって優れた特性を証明した(特開2000-152600)。また、この駆動方式を溶融金属の回転攪拌に応用し、液面の変形を伴わない高速回転攪拌機を開発した(特願2002-23074)。
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