研究概要 |
ホスホリパーゼD(PLD)アイソザイムPLD1,2の細胞機能における役割を明らかにするために、PLD1,2cDNAを一過性に細胞に導入し、細胞機能やとシグナル伝達系の影響を検討した。PC12細胞ではH_2O_2や低酸素によるアポトーシス誘導初期にホスホリパーゼD(PLD)活性が一過性に上昇した。H_2O_2によるPLDの活性化はMAPキナーゼファミリー(ERK, p38MAPキナーゼ)を介して活性化され、PLD2に特異的であった。また、PLD2を過剰発現させると低酸素によるアポトーシス誘導が抑制されることより、PLDはアポトーシスに抑制的に作用することが示唆された。さらに、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)はsurvivalシグナルに関与することが知られているが、S1P受容体EDG3を過剰発現したCHO細胞を用いて、S1P刺激によるPLD活性化,PI3キナーゼ・Aktの活性化を検討した。S1P刺激によりPI3キナーゼ、Aktが活性化されるが、1-ブタノールにより阻害されるが、2-ブタノールでは影響されず、また、wild PLD1やcatalytically negative PLD1の過剰発現により、S1P刺激によるAktの活性化は、前者で促進され、後者で抑制された。さらに、Streptomyces cromofuscus PLD処理によりPI3キナーゼ・Aktの活性化が引き起こされた。これらの結果から、PLDはsurvivalシグナルとして知られているPI3キナーゼ・Aktの活性化を介してアポトーシス防御に関与することが推測された。 また、ヒト腎がん組織における著しい高いPLD活性が認められた。PLD2の抗体を用いて組織染色を行い、正常組織に比べて腎がんの核にPLD2が特異的に局在することが認められ、PLD2の増殖への関与が示唆された。
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