分裂中の細胞で分裂面がいつ、どこに決定されるかをいち早く判別するために、アクチン繊維の分布を定量的に測定する方法を開発した。卵母細胞をホルマリンで固定し、アクチン繊維を蛍光標識ファロイジンで染色して蛍光顕微鏡で観察し、コンピュータ画像処理で蛍光像から表層のみを切りだし、表層に沿った蛍光強度の分布を定量した。分裂装置の位置を観察するために、DAPIでDNAを染色して染色体を観察した。イトマキヒトデ減数分裂における表層アクチン繊維の分布は卵核胞崩壊後しばらくして動物極で大きかった。分裂前に植物極で増加した。極体のふくらみが現れる直前に動物極周辺で蛍光が強くなるが、動物極頂点でアクチン繊維が減少した。ふくらみが大きくなるにつれて、頂点のアクチン繊維はますます減少し、頂点周辺のアクチン繊維は増加して表層は収縮して、分裂溝になった。そして、分裂溝が極体をくびれきった。このことから、分裂シグナルは、中心体からの距離に対して表層アクチン繊維を増加させるだけでなく、2相性を示すことが明らかになった。また、極表層でアクチン繊維が減少することによって分裂装置の赤道が動物極周辺のアクチン繊維集積部まで移動してそこで分裂するという、極表層弛緩説を支持する結果となった。さらに、機械的に動物極を圧迫して減数分裂を阻害した卵母細胞のアクチン繊維の分布を観察すると、極体が形成されるときと同様に、動物極周辺に環状に集積したアクチン繊維の直径が時間とともに小さくなった。一方、卵表面の変形から、発生する張力が見積もられると考えられるので、極体形成中の張力の大きさを測定し、アクチン繊維の分布と比較検討する予定である。
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