セプチン・ファミリーの内、脳で高く発現されている4つの分子(CDCrel-1、septin6、CDC10、H5)それぞれに対する抗血清を作成し、各タンパク質の脳内での局在を光学顕微鏡および電子顕微鏡レベルでの免疫組織化学によって検討した。その結果、これらの分子が、一部は重なりながらも、互いに異なる分布を示す事が明かとなった。例えば、CDCrel-1は、視床、淡蒼球、小脳核などにおけるGABA作動性神経のシナプス小胞に、septin6は、嗅球糸球体のシナプス小胞に、CDC10は脳全体に渡って前シナプス膜や星状グリアの突起に、H5は、一部の領域の星状グリアの突起に高く発現していた。これらの知見は、酵母の4種のセプチン分子が共に分裂溝に局在し、細胞質分裂に関与する事と比べると意外であり、哺乳動物においては、異なる組み合わせのセプチン多量体が異なる機能を持っている可能性を示唆している。一方、セプチンタンパク質の機能を生化学的に明らかにする目的で、大腸菌で発現させた組換体Nedd5及びseptin6を精製し、その試験管内での繊維形成能と微細形態、結合タンパク質などの解析を進めた。その結果、これらのタンパク質は単独で繊維状の多量体形成する事、F-アクチンと直接結合し得る事などが確認された。また、これらのタンパク質と結合する3種の新規分子を検出し、解析を進めている。さらに、H5遺伝子欠損マウスを作成し、その生理機能を明らかにする目的で、ターゲティング・ベクターを構築し、相同組換えを起こしたES細胞を樹立した。
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