研究概要 |
セプチンは真核生物の細胞分裂や細胞極性維持に必須なGTP結合タンパク質である。ヒトにおいては少なくとも9種類のセプチン・ファミリー・タンパク質が存在し、それらが複合体を形成してアクチン細胞骨格系や小胞分泌系と密接に関連することが判明しつつあるが(Longtine et al. Curr.Opin.Cell Biol.8,106-119,1996;Field and Kellogg, Trends Cell Biol.9,387-394,1999;Konoshita and Noda,2002)、その詳細な機能や作用機構は未知である。本研究課題では主に、セプチンと相互作用する分子の同定、アルツハイマー病患者および正常ラットの脳におけるセプチンの発現パターンの解析(木下ら、Am.J.Pathol,153,1551-1560,1998; J.Comp.Neurol,428,223-239.2000))、脳特異的な発現を示すH5のノックアウト・マウス作成を進めた。これまでに得られた成果として、セプチンがBorgファミリータンパク質と直接結合すること、Borgはセプチンの繊維構造を破壊し、Cdc42はこの活性を負に制御することが見出された(Jobertyら、Nature Cell Biol.2001)。すなわち、Cdc42がセプチンによる繊維状構造構築を正に制御する上流因子である可能性が示唆された。一方、ノックアウト・マウスの作成に関しては、これまでにマウス・ゲノムH5遺伝子の単離、ターゲテイィグ・ベクターの構築、相同組換えによるヘテロ・ノックアウトES細胞の樹立、良好なキメラマウスの作成までを進めた。今後、交配によるホモ欠損マウスの作成および表現型の解析を進める。
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