Rho低分子量G蛋白質がアクチン細胞骨格系を介して細胞質分裂を制御していることが知られている。本研究では、出芽酵母を用いてRhoによる細胞質分裂の制御機構について解析し、以下の成果を得た。 Rhoからアクチン細胞骨格へのシグナル伝達経路が明らかにされるにつれ、アクチン依存モーターであるタイプI型ミオシン(酵母ではMYO3、MYO5)がアクチン系の制御に重要な役割を果たしている可能性が出てきた。そこで、MYO3に結合する蛋白質を検索してMTI1(Myosin tail domain interacting protein)を単離した。MTI1は、SH3ドメインとproline-richなドメインを有する新規アダプター蛋白質である。一方、Wiskott aldrich-syndromeの原因遺伝子がコードするWASPに結合する蛋白質WIP(出芽酵母ではVRP1)が、MYO3、MYO5を正に制御することが明らかにされている。本研究で、MTI1がVRP1とantagonisticに作用することにより、アクチンのポリメリゼーションを負に制御している可能性が高いことを明らかにした。(投稿準備中) Myo2は、Rho低分子量G蛋白質Rho3と直接結合するミオシンVで、細胞内装置の細胞極性にしたがった配置分配に関わるモーター蛋白質である。細胞質分裂時には、細胞質分裂面に集合している。このMyo2の機能を解析する目的で、Myo2と蛋白質相互作用を行う因子の同定をおこない、Rab型低分子量G蛋白質Ypt11を単離した。Ypt11は、Myo2のC末尾部に結合し、Myo2に依存して細胞表層伸長部に局在し、細胞質分裂時にはMyo2と同じく細胞質分裂面に集合していた。Ypt11pは小胞体(ER)と親和性をもち、細胞伸長部の表層直下にあるCortical ERに局在していると推定される。Myo2は、Ypt11を輸送することで、Cortical ER機能に関与していると考えている。Cortical ERの機能については多くがわかっていないので、Ypt11を手がかりにCortical ERと細胞質分裂の関係について解析をすすめたい。 以上のように本年度の本研究は着実に進めることができた。
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