グリア細胞における神経伝達物質受容体の発現調節

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10214201
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 渡辺 雅彦 北海道大学, 医学部, 教授 (70210945)
• 研究分担者: 高山 千利 北海道大学, 医学部, 講師 (60197217) ; 永島 雅文 北海道大学, 医学部, 助教授 (40241319)
• キーワード: グルタミン酸トランスポーター / GLAST / 小脳 / バーグマングリア / プルキンエ細胞 / 発達 / シナプス形成 / マウス

研究概要

野生型マウスにおいて、小脳プルキンエ細胞は莫大な数の興奮性シナプス入力を受け、放出された興奮性アミノ酸はバーグマングリア上に発現するグルタミン酸トランスポーターにより除去されている。グリア細胞によるシナプス伝達の調節機構を探る目的で、本年度はプルキンエ細胞シナプス形成異常にともなうグルタミン酸トランスポーターGLASTの発現変化を、リーラーおよびウイーバーミュータントマウスを用いて調べた。その結果、いずれのミュータントマウス小脳において、GLASTを発現する細胞は、グリア線繊維酸性蛋白陽性の星状膠細胞であった。しかも、このGLAST発現グリア細胞は、細胞移動障害に伴う異所性のプルキンエ細胞も含めプルキンエ細胞の細胞体と樹状突起に付随していることから、野生型におけるバーグマングリアに相当すると考えられた。しかし、転写レベルにおいて、ミュータントマウス小脳ではGLASTの発現レベルは野生型の約3分の1〜6分の1まで減少していた。以上の結果は、グリア細胞におけるトランスポーター発現調節を介して、グルタミン酸除去機構が興奮性シナプスの形成状況に応じて能動的に制御されていることを示唆する。

研究成果

• [文献書誌] Shibata Takashi: "Different expressions of AMPA and NMDA receptor subunit mRNAs between visceromotor and somatomotor neurons of the rat lumbosacral spinal cord"J. Comp. Neurol.. 404. 172-182 (1999)
• [文献書誌] Toki Shima: "Early establishment of lesion-insensitive mature barrelettes corresponding to upper lip vibrissae in developing mice"Neurosci. Res.. 33. 9-15 (1999)
• [文献書誌] Fukaya Masahiro: "Spatiotemporal expression of mRNAs for PSD-95/SAP90 protein family in the mouse brain"Neurosci. Res.. 33. 111-118 (1999)
• [文献書誌] Hashimoto Kouich: "Impairment of AMPA receptor function in cerebellar granule cells of ataxic mutant mouse Stargazer"J. Neurosci.. 19. 6027-6036 (1999)
• [文献書誌] Knouff Cristopher: "Apo E structure determines VLDL clearance and atherosclerosis risk in mice"J. Clin. Invest.. 103. 1579-1586 (1999)
• [文献書誌] Fukaya Masahiro: "Down-regulated expression of glutamate transporter GLAST in Purkinje cell-associated astrocytes of reeler and weaver mutant cerebella"Neurosci. Res.. 34. 165-175 (1999)
• [文献書誌] Tsujita Mika: "Cerebellar granule cell-specific and inducible expression of Cre recombinase in the mouse"J. Neurosci.. 19. 10318-10323 (1999)