本研究班において、アストロサイトの部位特異性をになう機能分子(アストロサイトの膜表面のレセプター、トランスポーター、チャネル、ポンプ、細胞接着因子類、神経栄養因子など)の同定を行うことを目的に研究を進めた。 1)アストロサイトが産生する神経栄養因子の部位特異性の検索。アストロサイトが産生する神経栄養因子の遺伝子発現量が部位により異なるかどうかを検討した。方法としては、胎生18日のラット胎児より、部位別(大脳皮質、海馬、嗅脳、小脳、脊髄)にアストロサイトを初代培養し、RNAを抽出し、northern blotにて解析した。その結果、GMFBは、どの部位でもほぼ同じ発現量があり、部位による差はなかった。GMFGは、小脳、脊髄で多く発現しており、海馬で少ない傾向が観察された。また、LC1は、海馬、大脳皮質、小脳で多く、嗅脳、脊髄で発現が少なかった。 2)Atras Arrayによるアストロサイト部位特異性の解析。胎生18〜19日ラット胎児より、大脳皮質、海馬、小脳を分取し、アストロサイトの初代培養を行なった。これら細胞よりRNAを抽出し、Clontech社のAtlas 1.2 Rat Arraysによる解析を行った。その結果、大脳皮質アストロサイトと海馬アストロサイトを比較した場合、11種類の遺伝子の発現に発現量の差が認められ、そのうち、7種類が皮質に多く、4種類が海馬に多く発現していた。大脳皮質アストロサイトと小脳アストロサイトを比較した場合、9種類の遺伝子に発現量の差が認められ、そのうち5種類が大脳皮質に多く、4種類が小脳に多く発現していた。次に、上記の解析で発現に差が見られた遺伝子のうち、Id-2、HSP27、LC1についてRT-PCR法を用いて確認した。PCR productを半定量的に検討した結果、Atras Arrayの結果とほぼ一致した結果が得られた。
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