研究課題/領域番号 |
10214204
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研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
池中 一裕 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 教授 (00144527)
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研究分担者 |
馬場 広子 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (40271499)
藤本 一朗 岡崎国立共同研究機構, 統合バイオサイエンスセンター, 助手 (70264710)
鹿川 哲史 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (50270484)
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キーワード | 有髄神経軸索 / イオンチャネルクラスタリング / ランビエの絞輪 / パラノード |
研究概要 |
有髄神経軸索において髄鞘が形成されると軸索上にはnode、軸索と髄鞘が直接接するparanode、juxtaparanode、および髄鞘に完全に覆われるinternode、という構造の異なる4つのドメインが形成される。活動電位発生に関わる電位依存性Na^+およびK^+チャネルは、無髄軸索上では均一に分布するのに対して、有髄軸索上ではそれぞれnodeあるいはjuxtaparanodeに特徴的に局在化する。しかし、髄鞘膜がどのような機序で軸索ドメイン形成を引き起こすのか詳細は明らかではなく、またグリアとニューロンの相互作用を理解する上で重要なparanodal junctionの形成機構も依然不明である。 上記の疑問を解明する目的で、正常および様々な髄鞘形成異常マウスにおける軸索上のドメイン形成を解析した結果、Na^+チャネルの存在するnodeの初期形成には髄鞘膜は必要なくオリゴデンドロサイトの存在が不可欠であること、しかしnodeの成熟化には髄鞘膜が必要であることが分かった。一方K^+チャネルが局在しているドメインを形成するには成熟した髄鞘が必須であること、その局在化部位の決定には髄鞘膜およびparanodal junctionが重要であることが明らかになった。さらに一旦形成されたドメイン構造が脱髄後に消失することより、髄鞘膜は軸索ドメインの初期形成のみならず維持にも必要であることが分かった。 現在paranodeに局在しjunction形成に関与している細胞接着分子として軸索側ではcontactin、contactin-associated protein、髄鞘側ではneurofascin155(NF155)が同定されている。しかし、これら軸索および髄鞘側の分子が直接結合している証拠はなく、junction形成に関与している他の分子の存在が推測された。そこで髄鞘側のjunction形成に関与する分子を解明する研究を進めた結果、髄鞘の主要糖脂質の一つであるスルファチドおよび髄鞘最外層に存在する4回膜貫通蛋白CD9の欠損マウスが、ともにjunction形成異常を呈すること、そしてCD9はparanodeにも局在していることを見出した。さらにどちらの欠損マウスにおいてもNF155の局在異常が認められた。これらのことよりスルファチドおよびCD9はNF155などjunction形成に関わる髄鞘分子をparanodeに運ぶ重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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