研究課題/領域番号 |
10214206
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研究機関 | 国立精神・神経センター |
研究代表者 |
和田 圭司 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第4部, 部長 (70250222)
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研究分担者 |
関口 正幸 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第4部, 室長 (80260339)
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キーワード | シナプス / 軸索 / 変性 / グリア / 遺伝子 / ユビキチン / 脱ユビキチン化酵素 / ポジショナルクローニング |
研究概要 |
本年度はニューロン・グリアの相互作用をin vivoで解析可能にする個体ツールとしてgracile axonal dystrophy(gad)マウスを確立した。gadマウスは我が国で見出された常染色体劣性遺伝性のミュータントマウスで、病理学的に逆行性の神経軸索変性、即ちシナプス前側の変性を特徴とする。病変は後根神経節軸索の中枢端および末梢端に初発するが病態の進行とともに運動ニューロンや後脊髄小脳路などに進展する。変性した軸索端は腫大しておりニューロフィラメントやミトコンドリアの蓄積を伴うspheroidを形成し、その周辺にはグリアの増殖を認める。本研究では逆行性軸索変性の病態機序を分子レベルで明らかにするためgadマウスの責任遺伝子をポジショナルクローニングにより単離することにした。これまでにgadマウスの戻し交配により作成されたパネルの遺伝子連鎖解析からgad遺伝子マウス第5番染色体上D5Mit197とD5Mit151の2つのマイクロサテライトマーカーに挟まれた約0.8cMの領域に存在する可能性が高いことを見出していたが、その成果を元にYAC、BACクローンを用いた物理地図の作成、さらにBACクローンをを使用したエクソントラップなどを行ったところ、脱ユビキチン化酵素の一つであるubiquitin C-terminal hydrolase I遺伝子(Uchll)が原因遺伝子であることを見出した。gadマウスではUchllのエクソン7、8を含む約3.5kbのゲノム部分が欠落していた。この結果、これまで不可能であったgadマウスの発症前遺伝子診断が可能となりシナプス前側変性に伴うグリアの形態的・機能的変化を追求できるようになった。とりわけgadマウスでは軸索変性途上で再生機転の働くニューロン(末梢)も確認されており神経の機能修復におけるグリアの関与を解析する上でgadマウスは貴重な存在になると予想される。
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