研究概要 |
クラスリン被覆小胞は、トランスゴルジネットワークからリソソームへのタンパク質輸送や、細胞膜からのエンドサイトーシスに関与する。クラスリン被覆小胞の形成は、輸送されるべき積み荷タンパク質の細胞質領域に存在する輸送シグナル(チロシン・シグナルなど)を認識してアダプタータンパク質(AP)複合体が結合し、そこにクラスワンを呼び寄せることにより始まる。AP複合体はこれまでに3種類(AP-1、AP-2、AP-3)知られており、それぞれ4つのサブユニット(AP-1、γ,β1,μ1,σ1:AP-2、α,β2,μ2,σ2:AP-3、δ,β3,μ3,σ3)で構成されている。これらのうち、μサブユニットは直接チロシン・シグナルに結合する。本研究では以下のことを明かにした。 1. γおよびσ1と高い相同性を示す新奇のアダプター様サブユニットγ2およびσ1Bを同定した。γ2サブユニットは、γとは異なりエンドソーム様の構造に局在していた。また、酵母two-hybridシステムを用いて既知のAPサブユニットとの相互作用を調べた結果、これらの新奇のアダプター様サブユニットは、新たなAP複合体を形成する可能性を示した。 2. μ2サブユニットの遺伝子を解析し、この遺伝子が12のエクソンから成ること、エクソン5の選択的スプライシングにより2種類のμ2 mRNAが生じることを明かにした。 3. 酵母two-hybridシステムを用いてμ1、μ2、μ3の各サブユニットとチロシン・シグナルの相互作用を調べることにより、これらがチロシン残基近傍のアミノ酸配列を区別して認識し、異なるタンパク質の輸送に関与する可能性を示した。
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