核膜は細胞分裂時に分解・小胞化し、分裂終期に小胞が融合して再形成されるが、それらの分子機構はまだよくわかっていない。我々は、小胞輸送において膜融合に関与するNSF(ATPase活性を持つ)が核膜にも存在していることを見い出し、核膜結合NSFが有糸分裂時に核膜孔複合体タンパク質とよく似た挙動をすることを示した。このことは、NSFが核膜融合反応にも関与していることを示唆している。本年度は以下の成果を得た。 1) NSFは膜表在性のSNAPおよび膜内在性のSNARE(syntaxinやSNAP-25などのサブユニットから構成される)と複合体を形成して膜融合反応に関与する。そこで抗SNAP-25抗体を作成し、アフリカツメガエルの卵母細胞抽出液を用いたin vitroの核膜融合反応への効果を調べた。その結果、抗SNAP-25抗体は濃度依存的に核膜融合反応を阻害した。抗SNAP-25抗体で認識されるアフリカツメガエルのタンパク質は哺乳類のSNAP-25より約7kDa大きく、新規な分子種であると考えられたので、現在このタンパク質のクローニングを進めている。 2) 生きた細胞における核膜結合型NSFの性質を調べるために、NSFをGFPとの融合タンパク質として発現させた。発現した融合タンパク質は核膜やゴルジ体に結合していたが、多くはサイトゾルに存在していたため解析を行うことが困難であった。現在、SNAPと共発現させて膜結合量を増やすことを試みている。 3) 核膜に局在しているSNAREを同定するために、酵母のtwo-hybrid systemを用いてSNAP結合タンパク質を検索した。その結果、酵母Ufe1p(syntaxinの一種)に相当するヒトのタンパク質を同定することに成功した。Ufe1pは酵母のカリオガミー(核膜融合)に関与していることが知られているので、今後ヒトUfC1pが核膜小胞の融合に関与するかどうかを調べる予定である。
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