核膜は細胞分裂時に分解・小胞化し、分裂終期に小胞が融合して再形成されるが、その分子機構はまだよくわかっていない。我々は、小胞輸送において膜融合に関与するNSFが核膜にも存在していることを見い出した。NSFはSNAPおよびSNARE(syntaxin、SNAP-25、VAMPなどから成る)と複合体を形成して機能する。本年度の研究によって以下のことを明らかにした。 (I)αSNAPの核膜融合への関与 ウシ脳αSNAPに対する抗体は、アフリカツメガエル卵母細胞のαSNAPに相当するタンパク質と特異的に反応した。この抗体をアフリカツメガエル卵母細胞抽出液を用いた核膜融合反応系に添加すると、核の成長が顕著に阻害された。この阻害はαSNAPを同時に添加すると抑制された。これらの結果はαSNAPが核膜形成に関与していることを示唆している。 (ii)SNAP-23の核膜融合への関与 SNAP-23はSNAP-25のアイソフォームであり、SNAP-25が主に脳で発現しているのに対し、SNAP-23は臓器に普遍的に発現している。ラットSNAP-23に対する抗体を作製し、核膜融合反応系に添加したところ、核膜融合反応は一部阻害された。 SNAP-23に対する抗体は32kDaのタンパク質を認識したが、これが本当にSNAP-23であることを確認するために、既知のSNAP-23とその近縁タンパク質のアミノ酸配列を基にプライマーをデザインしてPCRを行った。そして、得られたDNAフラグメントを用いてスクリーニングを行い、全長cDNAを得た。この遺伝子のコードするタンパク質はSNAP-23に対する抗体で認識されたことから、この抗体で認識されるタンパク質はアフリカツメガエル卵母細胞のSNAP-23であることが判明した。
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