細胞内エンドサイトーシス経路の分子メカニズムを明らかにするために、以前開発した蛍光励起セルソーターを用いる方法でこの経路に異常を持つ変異CHO細胞の単離をすすめた。LDLの分解が遅い新たな複数の変異株を得ることに成功し、それらの表現型について詳細な解析を行った。変異株群は少なくとも4つの異なる表現型を持つクラスに分類できた。そのうちのひとつは、以前詳細な解析を加えたLEX1株と類似しているが必ずしも同じでない表現型を、他の3つのクラスはLEX1株とは明らかに異なる表現型を示した。得られた結果は、新たに得られた変異株群が、エンドサイトーシス細胞内経路のいくつか異なった過程に変異を持ち、この経路の解析においてこれらの変異細胞群が有用であることを示している。細胞内のエキソサイトーシス経路の分子メカニズムを明らかにするため、セミインタクト細胞を用いた新規な細胞内小胞輸送アッセイ系を確立した。まず、緑色蛍光蛋白質(GFP)との融合蛋白質をプローブとすることにより、共焦点レーザー蛍光顕微鏡・超高感度ビデオ付き蛍光顕微鏡、エバネセント蛍光顕微鏡下で、「単一」のインタクト細胞内での蛍光性膜蛋白質の小胞輸送過程を経時的に追跡でき、かつ、フォトンカウントシステムを用い、小胞体→ゴルジ体間の輸送のキネティックスを「定量的」に解析するシステムを確立した。次に、ストレプトリシンO(SLO)を用いて形質膜を部分的に透過性にしたセミインタクト細胞内で、この輸送過程を、ATP再生系とL5178Y細胞の細胞質を用い再構成することに成功した。セミインタクト細胞内での輸送過程を上記顕微鏡システムを用いて追跡・解析した結果、小胞体からゴルジ体への輸送過程をATP一依存的な過程、ATP-細胞質-依存的な過程の、少なくとも2つの素過程にdissectionすることができた。この再構成システムを用いることにより、それぞれの過程に関与する細胞質因子や、輸送中間体(小胞)のダイナミクスを制御する因子の検索が可能となった。
|