研究概要 |
出芽酵母を用い,分泌経路における小胞形成とリサイクリングの分子機構について研究を行い,以下のことを明らかにした.1.小胞体からの小胞形成に必須なSarlpのGTPaseサイクルの調節因子として,Ekslp,Sed4pを同定した.Sed4pについては,Sarlp GAPの阻害因子である可能性を示唆した.また,Sarlp GEFであるSecl2pを負に制御する因子として,Hrr25pキナーゼを同定した.2.SAR1と類縁のGTPaseをコードARF1にさまざまなts変異を同定し,変異のアレルによって異なる輸送過程に損傷を示すことを明らかにした.3.Secl2pの小胞体局在化に関与する遺伝子として同定したRHR1の産物が,Sec12p,Soc71pなどの膜貫通ドメインを認識してゴルジ体から小胞体への逆向き輸送に働いていることを証明した.この認識に必要なモチーフを解析した.さらに, GFP-Rerlpを酵母で発現させ,このタンパク質がゴルジ体と小胞体の間をリサイクルしていることを,本研究で導入した共焦点蛍光顕微鏡システムで可視化することに成功した. 植物の形態形成におけるメンブレントラフイックの意義を明らかにするために,以下の研究を行った.l.植物のRab GTPaseであるAraファミリーのうち,Ara4を発現したときの酵母ypt変異株の形質を利用し,Ara4と相互作用する植物タンパク質としてAtGDII,AtGDI2,No.6を同定した.2.新たなAraとしてAre6を同定し,これも確かにGTPaseであることを示した.3.AtSARlの優性阻害型遺伝子をシロイヌナズナ個体に導入し,その条件発現が個体に及ぼす影響を検討した.3.酵母sec15を抑圧する遺伝子として同定したシロイヌナズナRMA1が,植物個体で根の形態形成に関与することを示唆した.4.植物のメンブレントラフィックの可視化マーカーとして,さまざまなGFP融合遺伝子を作製し,シロイヌナズナに導入した.
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