研究概要 |
出芽酵母を用い,分泌経路における小胞輸送の分子機構について以下のことを明らかにした.1.小胞体からの小胞形成において,Sed4pがSar1pの正の制御因子として働くことを示した.2.Sar1と類縁のArf1 GTPaseのさまざまなts変異が示す輸送損傷を詳細に解析し,その多コピー抑圧遺伝子を分離した.3.Sec12p等の一群の膜タンパク質の小胞体局在化に関与するRer1pが,ゴルジ体における選別受容体であることを証明した.また,Rer1pのゴルジ体局在化シグナルを同定し,COPIとの相互作用を明らかにした.4.トリプトファン輸送体Tat2pの細胞膜への正しい輸送に,エルゴステロール合成が必須であることを示した.5.Rer2pとそのホモログであるSrt1pが共にcis-prenyltransferase活性を有するが,産物の鎖長,局在性,発現様式等で異なる性質を持つことを明らかにした. 植物の形態形成におけるメンブレントラフィックの意義を明らかにするために,以下の研究を行った.1.AtSAR1の優性阻害型遺伝子をシロイヌナズナ培養細胞に導入し,その発現が小胞体-ゴルジ体間輸送を阻害することを示した.2.植物の新たなRab GTPaseとしてAra6,Ara7を同定し,これらがエンドソームで機能することを明らかにした.このうちAra6はこれまでに知られるRabとは大きく異なり,植物特異的な機能を持つことを示唆した.3.酵母sec15を抑圧する遺伝子として同定したシロイヌナズナRMA1が,新奇の膜結合型ユビキチンキナーゼをコードすることを示した.4.シロイヌナズナの液胞膜の可視化マーカーとして作製したγTIP-GFPの解析から,液胞膜は生きた個体の細胞内できわめてダイナミックで複雑な構造を取ることを明らかにした.
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