DNAのエンドジョイニングによる組換えの機構

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10216201
• 研究機関: (社)北里研究所
• 研究代表者: 池田 日出男 社団法人北里研究所, 基礎研究所, 部長 (10012775)
• 研究分担者: 舘林 和夫 東京大学, 医科学研究所, 助手 (50272498) ; 林 正彦 社団法人北里研究所, 基礎研究所, 室長 (20164965)
• キーワード: DNA二本鎖切断 / DNAエンドジョイニング / DnaBヘリケース / DNA損傷 / DNAリガーゼ / 遺伝的組換え / DNAトポイソメラーゼII / サイレンシング因子

研究概要

DNAに損傷が起きたときにDNAに二本鎖切断が導入される機構を明らかにするために、非相同的組換えにおけるDnaBヘリケースの役割について調べた。その結果DNA損傷によって誘導される非相同的組換えにおいて大腸菌DnaBヘリケースが重要な役割を果たしていることが分かった。DNA損傷によって複製フォークの進行が停止し、その結果DNAの二本鎖切断が誘導され、続いて非相同的組換えが誘導されるというモデルが考えられた。次に、切断されたDNAが再結合されるエンドジョイニングの過程について解析した。細胞内の大腸菌DNAリガーゼの活性を変異株や過剰生産株を用いて変化させたところ、非相同的組換えの頻度、ホットスポット、DNAの相同配列の長さの要求性に変化が認められた。従って、DNAリガーゼは再結合反応の性質を決定する重要な因子の一つであることが明らかとなった。次に、出芽酵母のプラスミドを用いた非相同的組換えの解析系によって、これまでにRad50、Mre11、Xrs2、Ku70、サイレンシング因子Sir2、Sir3及びSir4が、DNA末端の再結合反応に関与していることを明らかにしてきた。しかし、この解析系では、相同的組換えの因子であるRad52の要求性があるという問題点があった。即ち、この解析系のある段階で相同的組換えが関与していることが考えられた。この問題を解決するために、出芽酵母の染色体に選択マーカーを埋め込み、染色体上の非相同的組換えを測定する系を作成した。この系を用いて、DNAトポイソメラーゼIIに依存する非相同的組換えがトポイソメラーゼII阻害剤によって誘導されるかどうか調べ、出芽酵母においても大腸菌と同様にトポイソメラーゼIIに依存する組換えが起こることを示した。この系によって出芽酵母の染色体レベルでの非相同的組換えの解析が可能になった。

研究成果

• [文献書誌] Yamaguchi,H.,Hanada,K.,Asami,Y.,Kato,J.and Ikeda,H.: "Control of genetic stability in Escherichia coli : the SbcB 3'-5' exonuclease suppresses illegitimate recombination promoted by the RecE 5'-3' exonuclease."Genes Cells. 5. 101-109 (2000)
• [文献書誌] Hanada,K.,Iwasaki,M.,Ihashi,S.and Ikeda,H.: "UvrA and UvrB suppresses illegitimate recombination : Synergistic action with RecQ helicase."Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 97. 5989-5994 (2000)
• [文献書誌] Shanado,Y.,Hanada,K.and Ikeda,H.: "Suppression of gamma-ray-induced illegitimate recombination in Escherichia coli by the DNA binding protein H-NS."Mol.Gen.Genet.. (印刷中).
• [文献書誌] Tatebayashi,K.,Tani,T.and Ikeda,H.: "Fission yeast Mog1p homologue, which interacts with the small GTPase Ran, is required for mitosis-to-interphase transition and poly (A)^+ RNA metabolism."Genetics. (印刷中).
• [文献書誌] Kang,S.-W.and Ikeda,H.: "WRN homologues in non-human systems. In Werner syndrome : Implications for aging and cancer."GANN MONOGRAPH ON CANCER RESEARCH. (印刷中).
• [文献書誌] Onda,M.and Ikeda,H.: "Role of DNA ligase in the illegitimate recombination that generates bio transducing phages."Genetics. (印刷中).
• [文献書誌] Takeda,T.,Ogino,K.,Tatebayashi,K.,Ikeda,H.,Arai,K.and Masai,H.: "Regulation of initiation of S phase, replication checkpoint signaling and maintenance of mitotic chromosome structures during S phase by Hsk1 kinase in the fission yeast."Mol.Biol.Cell.. (印刷中).
• [文献書誌] Shobuike,T.,Tatebayashi,K.,Tani,T.,Sugano,S.and Ikeda,H.: "The dhp1^+ gene, encoding a putative nuclear 5'-3' exoribonuclease, is required for proper chromosome sygregation in fission yeast."Nucleic Acid Res.. (印刷中).