研究課題/領域番号 |
10216201
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
小方 康至 国立遺伝学研究所, 放射線・アイソトープセンター, 助手 (90344449)
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研究分担者 |
仁木 宏典 国立遺伝学研究所, 放射線・アイソトープセンター, 助教授 (70208122)
池田 日出男 (株)メディネット, 先端医学研究所, 所長 (10012775)
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キーワード | 非相同的組換え / 染色体再編成 / DNA二重鎖切断 / 増殖静止期 / 飢餓 / DNAアルキル化 / adaptive mutation / adaptive amplification |
研究概要 |
「非相同的組換え」は、相同性の全く無い、又は高々数塩基対の短い相同性の有る塩基配列の間で起こる組換えを謂い、染色体再編成の原因となる。私達は、大腸菌に溶原化しているファージが誘発される際に起こる非相同的組換えを定量的に検出する系を開発し、非相同的組換えの機構解明を試みている。 非相同的組換えは、紫外線やγ線、DNAに損傷を与える様々な薬剤、活性酸素と云った「外因性の」ストレスによって誘導されるが、最近私達は、外因性のストレスのみならず、「内因性の」ストレスとも謂うべき、増殖静止期に於ける飢餓によっても非相同的組換えが誘導される事を見出した。又、増殖相が対数増殖期から増殖静止期へと遷移するに際し、大腸菌染色体のDNA二重鎖切断が亢進する事から、増殖静止期に亢進する非相同的組換えは、DNA二重鎖切断によって生じたDNA末端が、非ぬもの同士で再結合する事によって組換えが起こるとする「非相同的組換えの"break-andjoin"モデル」によって説明する事が出来た。更に、アルキル化したDNAを修復する遺伝子の変異株では、増殖静止期にDNA二重鎖切断と非相同的組換えの両方が亢進する事が判った。従って、増殖静止期に亢進する非相同的組換えの機構として、増殖静止期に於ける飢餓条件下にDNAのアルキル化が促進され、その結果、DNA二重鎖切断が生じ、組換えが起こると云うモデルが考えられた。 最近、これも矢張り飢餓条件下に亢進する"adaptive mutation"にはSOS応答が必要である事(McKenzie et al.,2001)が報告されたが、SOS応答がDNA二重鎖切断に起因して誘導される事を併せ考えると、増殖静止期に亢進するDNA二重鎖切断は"adaptive mutation"の原因でもあると考えられる。更に、矢張り飢餓条件下に亢進する"adaptive amplification"も、DNA二重鎖切断に起因して非相同的組換えや相同的組換えが促進され、遺伝子の増幅が起こると説明出来る。斯様にDNA二重鎖切断は、細胞が飢餓に曝された時に起こる遺伝的な変化の最初の段階、又は信号の役割を果たしているかも知れない。
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