研究概要 |
Ataxia-telangiectasia(A-T),Bloom症候群(BS)はともにDMの不安定性を示す疾患群である。Bloom症候群の病因遺伝子産物BLMはRecQ helicase familyに属し、DNAの複製・修復に関与する。A-Tの病因遺伝子産物(ATM)はPI-3kinaseと相同性を有し、p53などの基質をリン酸化し細胞周期を調節する。 1)ATMとBLMの会合:BLMと会合するタンパクの同定をyeasttwo-hybrid systemを用いて行い、ATMとBLMが会合することを明らかにした。さらに、ATMがBLMのThr-99をリン酸化すると、放射線照射によりDNAの二本鎖切断がおきるとATMが活性化され、ATMによるBLMのリン酸化が増強することを明らかにした。 2)ATM-/-BLM-/-のダブルノックアウト細胞株の作製:ATMとBLMの会合についてさらに解析するためにATMとBLMの両者を欠損するDT40細胞株を作製し、放射線感受性、sister chromatid exchange(SCE)等について検討した。ATM-/-BLM-/-のダブルノックアウト細胞株は、それぞれ単独のATM-/-またはBLM-/-細胞株とほぼ同様の表現型を示した。しかし、AATM-/-BLM-/-のダブルノックアウト細胞株はATM-/-細胞株とほぼ同様に放射線感受性は著しく亢進しており、BLM-/-細胞株とほぼ同様にSCEの頻度が著しく上昇をしていた。このことより、ATM,BLMが一部、協調的に働くが、大部分はそれぞれ独立のpathwayでDNAの複製・修復に関与していることが明らかにされた。 3)BSの診断スクリーニング:BSは臨床上、非典型例もあり確定診断がつけにくい症例もある。BLMのcDNAは4.3kbと比較的大きな遺伝子であり全長の塩基配列を調べるのは時間を必要とする。そこで、患者由来の細胞の免疫染色をおこなったところ患者細胞では核内のdotが認められず、イムノブロットでもタンパクの発現が認められなかった。これらより、免疫染色とイムノブロットを組み合わせによりBLMのタンパク発現を解析することで、BS診断のスクリーニングが可能なことを報告した。
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