脊椎動物では、活性のあるDNA型転移因子は数例しかなく、メダカのTol2因子はそのうちのひとつである。Tol2因子を利用して、研究課題に表された目的を達するために、今年度は準備としての下記の研究を行った。 (1) 自然集団での変異の調査:自然集団に存在するコピーのランダムサンプルを得て、その構造の変異を調べた。その結果、内部に欠失をもつ短いコピーはほとんどないことが判明した。これは、他の転移因子とは異なるTol2因子の特徴である。この原因としては、Tol2因子がメダカの自然集団に侵入してから十分な時間が経過していないという説明が、妥当である。この推測が正しいならば、Tol2因子が転移活性を保持していることの間接的な証明となる。これから、本研究課題の目的のためにTol2因子はふさわしい材料であるとの認識が、補強された。 (2) 切り出し頻度測定系の開発:計画している一連の実験をを行うために、転移頻度を簡便にそして正確に測定するための実験系が必要である。このために、当初の計画にさらに改良を加えた系を考案し、その開発を行った。この系は、プラスミドベクターがもつlacZ遺伝子を利用するものであり、大腸菌コロニーの白または青の色で切り出しの有無の判定ができる。設定した条件のもとで安定して10^<-3>のオーダーの頻度となることを確認し、切り出し頻度測定の系は完成した。
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