平成11年度までに、以下の成果が得られていた。(1)転移反応の一部である切り出し(excision)について、これがメダカの細胞内で起こっていることを確認した。(2)切り出しの頻度が自然の状態の40倍ほどに上がる条件をみつけた。(3)自律的(autonomous)なコピーを同定した。(4)転移酵素(transposase)をコードすると考えられるmRNAを、メダカの細胞から単離した。 平成12年度は、転移反応の残りの部分である挿入(insertion)を検出し、転移酵素の候補が、機能をもつ転移酵素であると証明することを、目標とした。このために、挿入を効率よく検出するための実験系を考案した。これは、バクテリアのプラスミドを2種類と、薬剤耐性遺伝子を3種類使う系である。プラスミドをメダカの細胞に注入し、細胞分裂の期間を経過させる。プラスミドを回収し、これをバクテリアに取り込ませてプレートにまく。メダカの細胞内に存在した間に挿入があったプラスミドは、薬剤耐性遺伝子の特定の組合せとなり、この組合せをもつコロニーだけがプレートにはえる。このような原理に基づいて設計した実験系である。これを構築して実験を行ったところ、予想する組換えプラスミドが得られた。つぎに、挿入点近辺の塩基配列を調べたら、正確に Tol2因子が挿入されていた。再現性も明確であった。これで、メダカの細胞内でTol2因子の挿入が実際に起こることが、証明された。また、この挿入は転移酵素の候補のmRNAをプラスミドに混ぜて注入すると起こり、混ぜない場合は起こらなかった。これから、このmRNAから作られるタンパク質が実際に転移酵素の機能をもつことが、証明された。
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