R64シャフロンでは、4種のDNAセグメントが7個の19bp反復配列により区分されている。領域下流に位置するrci遺伝子の産物の作用により、任意の逆向き反復配列間で部位特異的組換え反応が起き、各セグメントは単独あるいは連合して逆位を行う。本領域は、PilVタンパクをN末端部が一定でC末端部が異なる7種に変換する切換えスイッチとして機能し、液内接合伝達における受容菌の特異性を決定している。シャフロンでは分子内の逆位反応だけが起り、順向き配列間でのDNA組換えは認められない。精製Rciタンパクと基質DNAを反応させると、19bp反復配列の一端に7bpの5'突出粘着末端を生成させるようなニックの導入が観察され、この部位でDNA鎖の交換が行われると推定された。精製タンパクは、19bp配列及びその上流約15bpに配列特異的及び非特異的に結合した。19bp配列及びその上流配列に変異を導入して組換え活性を調べた結果、19bp配列のみならず上流配列も組換えに大きな影響を及ぼすことが明らかになった。19bp配列の上流にこの配列の後半12bp相当を導入して内部逆向き配列(19+12bp配列)を構成させた場合には、この組換え部位を利用したDNAセグメントの脱離も認められた。また、19+12bp配列を用いた分子間の組換え反応も検出された。さらに、19+12bp配列を用いた組換え反応には、RciタンパクのC末端部は必要ないことが明らかになった。Rciタンパクの19bp配列に対する非対称的認識が、シャフロンにおいて分子内の逆向き反復配列間での組換えのみを許している原因であると推定された。
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