プラスミドR64のシャフロンでは、4種のDNAセグメントが7個のsfx組換え配列により区分されている。rci遺伝子の産物の作用により、任意の逆向きsfx配列間で部位特異的組換え反応が起き、各セグメントは単独であるいは連合して逆位を起す。PilVアドヘシンをN末部が一定でC末部が異なる7種に変換するスイッチとして機能し、液内接合伝達における受容菌の特異性を決定する。Rciタンパクを精製し、基質DNAを反応させると、3か配列の中央に7bpの5'突出粘着末端を生成するニックの導入が観察され、この部位でDNA鎖の交換が行われると推定された。5か組換え配列は、配列の保存した中央部、右アームと、保存していない左アーム配列とからなり、非対称である。Rci酵素は、sfx配列の右・左アームに配列特異的・非特異的に結合する。3fxの左アームも組換え活性に大きく影響した。sfx配列の左アームを右アームと等しくした対称組換え配列を構成すると、順向きsfx配列間での組換えも認められた。Rci酵素のsfx配列に対する非対称的認識が、逆向きsfx配列間での組換えのみを許す原因であると推定された。対称組換え配列を用いた組換えにはRciのC末部を必要としないことが生体内、試験管内実験で示された。液内接合伝達の受容菌表層には、7種Pilvアドヘシンにより認識される受容体-リポ多糖が存在する。各種腸内細菌のリポ多糖の生合成に関与するwaa変異株を用いて解析し、PilV受容体として機能するリポ多糖の部分構造を推定した。各種PilVアドヘシンを膜にブロットし、ビオチンで標識したリポ多糖を用いて、両者の特異的相互作用を証明した。PilVアドヘシンのC末部のみをGST融合遺伝子として発現・精製し、PilV-LPS特異的相互作用にはPilVのC末部が必要であることを証明した。
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