研究概要 |
高等植物のDNA型転移調節因子(トランスポゾン)は染色体上を転移し、種々のDNA再編成を引き起こして遺伝子の発現制御にも様々な影響を与え得る遺伝因子で、Ac/Ds系、En/Spm系Mu系などに大別できる。本研究の目的はアサガオやマルバアサガオの易変性変異を含む自然突然変異の同定や易変性変異の花の絞り模様形成機構を、DNA型転移調節因子の転移と遺伝子発現調節の両面から解析することである。また、後半の2年間は寺田博士を共同研究者に迎えイネの相同組換えも行い、以下の結果を得た。 17〜18世紀(江戸時代)に日本で花卉園芸化されたアサガオの自然突然変異は、En/Spm系のTpn1ファミリーと名付けた一群の非自律性転移調節因子の関わる変異で、白花や絞り花の変異体はアントシアニン色素生合成系のCHS,CHI,DFR,ANSの各遺伝子内にTpn1類縁因子が挿入した変異体であり、紫地に青色のセクターを生じる易変性「紫」変異の解析から、液胞のNa^+/H^+交換輸送体が花弁液胞のpHを上げて青花化させることを明らかにした。 17〜18世紀に欧米で花卉園芸化されたマルバアサガオの易変性「条斑」変異に関わるCHS-D遺伝子内に挿入されていたAc/Ds系の転移調節因子Tip100は自律性因子であり、赤色化を咲かせるpink変異はAc/Ds系の新規の非自律性のDNA型転移調節因子Tip201がF3'H遺伝子に挿入した変異であることを明らかにした。 イネにおける相同組換えによる遺伝子ターゲティングのために、高頻度形質転換、強力なPositive-negative選抜、PCR法を用いた導入遺伝子のゲノム挿入部位の確認など高効率で相同組換体を分離するための諸条件を検討し、世界で最初にイネのWaxy遺伝子をターゲティングしたトランスジェニックイネの作出に成功した。
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