研究課題/領域番号 |
10217206
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢崎 一史 京都大学, 生命科学研究科, 助教授 (00191099)
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研究分担者 |
佐藤 文彦 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (10127087)
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キーワード | ABC protein / mdr / 輸送 / 液胞 / 二次代謝 / ベルベリン / Coptis japonica / Thalictrum minus |
研究概要 |
本年度はオウレンの単離液胞を用いた、ベルベリンのin vitro輸送活性測定法を確立した。同培養細胞のインタクト液胞をアルカロイドとインキュベートし、これをシリコンオイル相を通して遠心濾過し、取り込まれた標識ベルベリンの放射活性を輸送活性とした。本実験系において、ベルベリンの液胞への取り込みはATPの存在下で対照に比べ50%上昇するのに対し、非加水分解性アナログのATP-γ-Sではその上昇が全く見られないことを明らかにした。また、引き続きオウレンABC蛋白を検索し、全長4kbの新分子種Cjmdr2のcDNAをクローニングした。そのアミノ酸配列は、Cjmdr1のそれと82%の同一性を有し、同じmdrサブファミリーに属することが明らかとなった。これを植物由来のホモログと比較することにより、NBF1と次の膜貫通部位の間の約80アミノ酸に、分子種間で非常に多様性が高いドメインがあることを見いだした。また配列的特異プローブを用いたノーザン解析では、両分子種とも培養細胞においてはほぼ構成的に発現しているが、植物体では器官特異的発現に差異が見られた。即ちCjmdr1は花や花茎で中程度の、根茎では高い発現を示したのに対し、Cjmdr2はほとんど根茎でのみ発現していた。根茎はベルベリンの主要蓄積組織であることから、アルカロイド蓄積と両分子種の発現部位との間に密接な相関があることが示された。 ベルベリン分泌型のアキカラマツ培養細胞において、ベルベリン非生産状態の細胞においてもその輸送能が保持されていることが明らかとなった。これは本植物のベルベリン輸送能がその内在性ベルベリンの有無に関らず発現していることを示す。また蛍光プローブのCalcein AMを用いアキカラマツ細胞のmdr依存的輸送活性を観察したところ、アキカラマツではコントロールのタバコ細胞と異なり細胞質にCalceinが蓄積されず、原形質膜にヒトP-糖蛋白質と同様の物質排出機構を有することが認められた。
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