研究課題/領域番号 |
10217206
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢崎 一史 京都大学, 生命科学研究科, 助教授 (00191099)
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研究分担者 |
佐藤 文彦 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (10127087)
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キーワード | plant ABC protein / P-glycoprotein / alkaloid / berberine / Coptis japonica / Thalictrum minus / MRP1 / 液胞 |
研究概要 |
本研究で取り上げている問題の一つに、アルカロイド耐性に対する植物種の特異性がある。本年度は、これに関わる遺伝子産物を同定することを目指し、オウレンから作成したcDNA libraryを酵母に発現させて、ベルベリン含有プレート上で形質転換体を選抜し、耐性株からオウレン遺伝子を回収してその実体を突き止める実験を行った。スクリーニングに用いた株としては、形質転換効率の良さから野生株を用い、10^6cfuの母集団から最終的に6クローンのcDNAが陽性クローンとして得られた。これらを含むプラスミドを酵母に再導入したところ、空ベクターの対照に比べて明らかにベルベリン培地上における生育が早いことが認められた。現在これらのうち、3クローンの配列解析が終了しているが、内2クローンはユビキチン、1クローンはデヒドロキナ酸デヒドラターゼのホモログであることが解明された。これらがオウレンのベルベリン耐性に寄与する機構の解明は今後の課題である。 一方、植物におけるABC蛋白質の生理的役割を解明する手段として、既に生化学的性質が詳細に解明されているヒトの輸送体遺伝子を植物に導入し、その表現系を検定する手法をとった。ヒトのP-糖蛋白質遺伝子mdr1と、MRP群の代表であるMRP1の全長cDNAをバイナリーベクターにサブクローニングし、タバコに導入した。Mdr1はその転写物が検出されたのみにとどまったが、MRP1はタバコ植物体および培養細胞において、蛋白質レベルでもその発現を確認できた。MRP1導入タバコの外観は、野生株と比べて差違が認められず、形態に対する影響はほとんど無いものと判断されたが、形質転換タバコは野生型に比べて、明らかにダウノルビシンやカドミウムに対する耐性が上昇していることが認められた。このカドミウムに対する耐性の差は、芽生えの根の生育においてより顕著に現れていた。このことは、植物のMRPが植物の根を土壌中の重金属汚染から保護する役割を果たしているとの仮説を支持するものである。
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