研究概要 |
Ca^<2+>シグナル伝達経路による細胞周期制御機構の詳細を明らかにするために、Ca^<2+>による細胞周期制御機構に異常のある変異株を多数取得し、遺伝学的に解析すると共に、変異を相補する遺伝子を取得し、その機能を調べた。zds1欠損株は、Ca^<2+>を加えると、細胞周期G2-delayがおこり、細胞の芽のが異常に伸長する。この経路に欠陥のある変異株、すなわちzds1破壊株のCa^<2+>感受性、異常極性成長を抑圧する変異株(scz)を多数分離した。347個の劣性変異株が取得され、相補試験の結果、14の遺伝子座に分類された。変異を相補する遺伝子のクローニングを行い、SWE1,MPK1,CNB1など取得が予想された遺伝子以外に機能未知の遺伝子が数個、見出された。scz5は、機能未知のABCトランスポーター遺伝子PDR15における変異であることが明らかになったので、SCZ5/PDR15の機能を解析した。 zds1欠損株の表現型に対するscz5変異の抑圧効果を調べた。scz5変異は、zds1欠損株の表現型、即ちCa^<2+>感受性、異常極性成長を抑圧した。また、zds1scz5二重変異株におけるCNまたはMPk1の過剰発現の効果を調べた。もしscz5変異がCNの下流で生じれば、CNを過剰発現してもシグナルが伝わらないため細胞形態が正常であると考えられ、また、Mpk1の下流で生じれば、Mpk1の効果はないと考えられる。zds1scz5には、Mpk1を過剰発現したときのみ細胞形態は正常であったことから、scz5はMpk1の遺伝学的下流に存在していることが示唆された。今回の解析から、Pdr15は細胞内Ca^<2+>の濃度制御に深く関与していることが予想される。今後は、このPDR15の生理機能について詳細に解析していく予定である。
|