酵母の多剤耐性機構で最も重要な役割を果たしているPdr5 ABCトランスポーターの新機能と考えられる興味深い機能を見いだしたので、Pdr5について以下の解析を行った。 1)基質特異性が変化した変異Pdr5の解析:基質特異性が変化した変異PDR510株について、変異点と薬剤特異性の関係を調べた結果、Pdr5は特定のアミノ酸残基で薬剤に対応しているのではなく、全体構造が関係する機構で薬剤に対応していることが示唆された。蛍光試薬ローダミンを利用して、各変異株の薬剤の排出を測定し比較した。 2)Pdr5 ABCトランスポーターの細胞周期制御における役割:Ca^<2+>シグナルによる細胞周期制御機構の詳細を明らかにするために、Ca^<2+>による細胞周期制御に欠陥のある変異株を多数分離した。遺伝学的解析により、少なくとも14個の相補性グループ(SCZ1〜14と命名)からなることを明らかにすると共に、変異を相補する遺伝子を取得と解析を行っている。このうちm、SCZ5遺伝子は多剤耐性ABCトランスポーターをコードするPDR5遺伝子と同一であることが分かった。Scz5変異を相補する遺伝子クローニングの過程で、別の機能未知なABCトランスポーターをコードする遺伝子、PDR12およびPDR5の転写制御に関わっていると思われる転写因子をコードする遺伝子も取得されたので、現在相互の関係について調べている。これらABCトランスポーターは細胞内CA^<2+>濃度の制御に関与している可能性が考えられるので、細胞内CA^<2+>濃度の上昇に応答するレポーター遺伝子を利用して、細胞内CA^<2+>を測定する準備を進めている。
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