ヒトcMOATの遺伝疾病と癌への関与

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10217209
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 内海 健 九州大学, 大学院・医学研究院, 助手 (80253798)
• 研究分担者: 和田 守正 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (20220965)
• キーワード: ABCトランスポーター / 抗がん剤感受性 / Dubin-Johnson症候群 / 大腸癌 / プロモーター

研究概要

ABCトランスポーターの多くは生体内の様々な器官や組織において発現しており異物・毒物排出ポンプとしての重要な生理的作用をしている。がんにおける抗がん剤の感受性を制御する分子標的としての臨床診断へ利用するためにはABCトランスポーターのがんにおける特異的発現の分子的機構を把握することが必須である。本年度は、
1.MRP2/cMOATおよび新たに単離した異物排出蛋白遺伝子MBP3を培養細胞(LLC-PK)に強制発現させる系とアンチセンスを用いた系を確立した。薬剤感受性試験でエトポシドが基質であることを明らかにした。
2.ABCトランスポーターの発現を、大腸癌、肝癌、脳腫瘍について免疫抗体法と定量的RT-PCR法により、組織レベルの発現局在を検討した。大腸癌においてはMRP2の発現が上昇し、薬剤感受性を担っていることを明らかにした。脳腫瘍においてはMRP3の発現亢進が認められた。
3.Dubin-Johnson症候群の原因遺伝子として、cMOAT遺伝子の変異を同定した。種々の変異によるMRP2/cMOATの活性低下の分子メカニズムを探り、第1ATP結合領域の変異では構造変化から、形質膜へのprocessingが障害されていることを明らかにした。
4.MRP2,MRP3のプロモーター領域を単離し、種々のシスエレメントを同定した。さらに、胆汁酸負荷やサイトカイン刺激などにより、発現が亢進、または低下する事を観察した。

研究成果

• [文献書誌] Izumi,H.,Uchiumi,T.and et.al.: "YB-1 binds preferentially to single-stranded nucleic acid and exhibit 3'-5' exonuclease activity."Nucl.Acids Res.. 29(in press). (2001)
• [文献書誌] Haga,S.,Uchiumi,T.and et.al: "The involvement of the multidrug resistance protein 3 in drug sensitivity and its expression in human glioma."Jpn.J.Cancer Res.. 92. 211-219 (2001)
• [文献書誌] Ushigome,F.,Uchiumi,T.,and et.al.: "Human placental transport of vinblastine, vincristine, digoxin and progesterone : contribution of P-glycoprotein."Eur.J.Pharmacol.. 408. 1-10 (2000)
• [文献書誌] Okamoto,T.,Uchiumi,T.,and et.al.: "Direct interaction of p53 with the Y-box binding protein, YB-1 : a mechanism for regulation of human gene expression."Oncogene. 19. 6194-6202 (2000)
• [文献書誌] Hinoshita,E.,Uchiumi,T.,and et.al.: "Increased expression of an ATP-binding cassette superfamily transporter, multidrug resistance protein 2, in human colorectal carcinomas."Clinical Cancer Res.. 6. 2401-2407 (2000)