研究概要 |
インスリン抵抗性状態では内皮機能障害が存在しこれが高血圧の発症あるいは維持に関わる可能性がある。しかしインスリン抵抗性状態で血管内皮機能が減弱する機序については不明な点が多い。高脂血症に広く用いられているstatin系薬剤やアドレノメデュリン(AM)はphosphatidylinositol-3 kinase(P-I-3K)/Akt案を介してNOを遊離させることが示されている。本研究ではインスリン抵抗性を示すZuckerラットにfluvastatinを投与してインスリンの作用ならびに内皮型NO合成酵素(eNOS)の活性化の両者に関与するP-I-3K/Akt系について解析した。16週齢Zucker肥満ラットのリング標本ではACh、AM投与による血管拡張は、対照群に比べ減弱していたが、statihの投与により対照群と同程度にまで改善した(%Δtension(10-6M ACh):対照-86±2,肥満-36±4,Statin-75±6%;P<0.05)。AMによる血管拡張はPI-3-K阻害薬であるLY294002(LY)前投与下で著明に減弱した。Western Blotによる検討ではAM 10-7M 15分刺激時のAktリン酸化は肥満群で低下していたが、Statin投与により約2倍に増加した。このAMによるAktのリン酸化はLY前投与により有意に抑制された。【結論】statin系薬剤はインスリン抵抗性ラットモデルにおいてAMによる血管拡張反応を改善した。またWestern blotでの検討結果からもstatinがP-I-3K/Akt経路を活性化していることが示唆された。StatinはAMと協調して内皮機能を改善させると考えられた。
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