研究概要 |
アドレノメデュリン(AM)は単に血管拡張因子としての役割に留まらず、血管系細胞において細胞増殖、遊走、アポトーシスの制御など多彩な生理活性を惹起することを明らかにした。AMは血管平滑筋細胞(VSMC)に対して、MAPキナーゼ依存性に細胞の増殖・肥大を促進するが、この機序にはCa^<2+>感受性の細胞内チロシンキナーゼ(分子量120kDa)の活性化とアダプター蛋白(Shc, Grb-2)のリクルートを介してras依存性MAPキナーゼの活性化が関与する。このチロシンキナーゼはPYK-2であることを同定した。このようにAMはVSMCに対してオートクリン・パラクリン増殖因子として作用する。一方AMは血管内皮、細胞(EC)に対してはcAMP非依存性に強力なアポトーシス抑制作用を示す。ECではAMはMax遺伝子を著明に誘導する結果、c-myc依存性アポトーシスにオートクリン・パラクリンとして拮抗することを明らかにした。さらにAMはVSMCのchemotacticな遊走をcAMP非依存性に制御することも明らかにした。RAMP(receptor activity modifying protein)/CRLR(calcitonin receptor-like receptor)系はAM受容体を構成するが、AMのVSMC遊走抑制作用はRAMP2/CRLR及びRAMP3/CRLR受容体を介して惹起され、これらの受容体を発現しないECや線維芽細胞では同様の作用はみられない。AMは当初、cAMPをセカンドメッセンジャーとする血管拡張因子として発見されたが、血管系のリモデリングにおいてはcAMPを介さない多彩な情報伝達経路が介在し、さらにAMの作用がRAMP/CRLR受容体の他に必要な細胞内構成要素の存在が示唆された。今後、RAMP/CRLR以外のAM受容体とその情報伝達系の解明が必要といえる。
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