研究概要 |
アドレノメデュリン(AM)は種々の方法による検索によって全身臓器に広く分布することが示されている.我々も、免疫組織学的手法によりヒト・ブタ・ラットにおいてAMは副腎髄質のみならず、全身諸臓器の主としてNeuroendocrine systemに分布していることを報告(Histochemistry,103:251-4,1995)し、AMが血圧調節のみならず多機能な生理作用を有することを示唆した.今回我々は、消化管粘膜におけるAMの分布および病態におけるその変化を免疫組織学的に検討した. ヒト正常消化管においてAMは、蛋白(RIAによる測定)およびmRNAレベル(Norther Blotによる解析)とも広汎に分布しており、免疫組織学的に腺管に見られ、特に、神経内分泌細胞に強い陽性像が認められ、消化管ホルモンとしての機能が示唆された.(Ann.C1in.Biochem.,35:643-8,1998)さらに、神経内分泌細胞のなかでもガストリン産生細胞に多く陽性像が認められ、ガストリン分泌との関連が示唆された.(Histopathology,34:134-9,1999)また、ヒトにおいて頻繁に認められる萎縮性胃炎におけるAMの変化は、胃粘膜の萎縮および単核白血球の浸潤の程度と相関して、減少していることが見出だされ、AMの産生と炎症との関連を示唆したはじめての報告である. (Histopathology,34:134-9,1999) ラット消化管においても広汎に分布しており、主に神経内分泌細胞に陽性像が認められた.胃においては、24時間絶食状態におくと、mRNAレベルで有意に増加することより、なんらかの調節機構に関与していることが示唆された.(J.Gastroenterol.,33:828-34,1998) これらの免疫組織化学にはRIA測定に使用した抗体と同様のものを使用してきたが、蛋白・遺伝子レベルの組織測定結果と免疫組織学的結果と若干の相違が見られたため、AMのring,C-terminal,およびその中間(25から36)のアミノ酸配列を認識する3種類の抗体を新規に作成し、再検討中である.また、培養血管内皮および平滑筋細胞におけるAMの種々の生理作用を検討中である.
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